シンポジウム「グローバリズムは私たちを幸せにするか?PART3」報告

2月のイベントでの
講演内容を、御報告致します

 

シンポジウム「グローバリズムは私たちを幸せにするか?PART3」報告
TPPプラスを許さない!全国共同行動
日 時:2019年2月8日(金)
会 場:参議院議員会館講堂
参加者:230人

 

1)TPPプラスを許さない!全国共同行動が主催するシンポジウム「グローバリズムは私たちを幸せにするか!?Part3」が2月8日に参議院議員会館講堂で開かれ、230人もの人々が集まりグローバリズムの問題点と市民たちがこれからどうしたらよいのかについて考えました。
 2018年12月30日にはTPP11は参加国のうち日、豪、加など7か国で発効し、追い打ちをかけるように2019年2月1日には日欧EPAが発効しました。この他にもRCEPの交渉もすでに進んでおり、また今年は日米貿易協定交渉も本格化します。米国のトランプ政権はTPPの水準を上回る農産物の関税引き下げ、日米貿易のルール見直しを求めています。また日本国内ではグローバル化を推進しやすくするため、種子法廃止、漁業法改正、水道法改正などが強行され、さまざまな規制緩和も進んでいます。

 

2)シンポジウムの第1部では、国際ジャーナリストの堤未果さんが、自由貿易協定がもたらす国民への悪影響をわかりやすく説明しました。普通の人々にとっては「自由貿易の政府間交渉」はなにか人ごとのようで実感がわきません。しかし、実際には農薬の使用が拡大されたり、食品表示が規制緩和されて、安全性に問題のある食品を消費者が見分けられなくなったり、種子法の廃止、森林法の改正、漁業法改正などによって、日本国内外の多国籍企業には有利なルールが作られ生産者、消費者・市民の生活が圧迫されています。


 堤さんは「水道法改正」を例に挙げて、日本においては2020年までに100兆円にもなろうとする水ビジネスに投資家が注目しているが、国民の多くはその危険性を知らない、と警鐘をならしました。水は医療、農業、工業用水などにとって欠かせないものですが、とりわけ大災害など有事の際には国民の命を守るため最優先させるインフラでもあります。これを企業にゆだねてしまうと地域の自治体が水を運営管理する主権が奪われ営利目的が前面に出る恐れがありますが、政府は民営化に誘導しています。こうした事態は国内外の投資家にとって絶好のビジネスチャンスだと警鐘を鳴らしました。しかし、この民営化の流れは住民の反対の声が集まれば阻止することもできるとし、人々が問題点に気づいて運動を広げることに期待を寄せました。他にも種子の問題や遺伝子組み換え問題を取り上げ、多国籍企業がこれを支配する背景には投資家が利益を拡大しようとする動きがあること、それにも関わらず反対の声を挙げてこの流れを変えていくことができることを訴えました。

 

3)シンポジウム第2部では、植草一秀さんがコーディネーターとなって「トークセッション」が行われました。


ソーヤー海さんは、どうやって若者に興味をもってもらうのか、社会運動がどうやって人を動かせるのか、という問題意識をもって、「全体像を捉えた社会運動」を模索しています。現実の社会システムは人々を監視する資本主義ともなっておりそれが人々を不幸にしているのではないか、と指摘し、「愛、やさしさ、思いやり」が人々にとって魅力的であるはずであることから、そうした思いを生かす土壌を作っていこう、と提案しました。
山田正彦さんは人々の生活に危機をもたらしている多国籍企業の支配に対し、社会運動が対抗し、成果をもたらしている、と強調しました。すなわち、遺伝子組み換え(GM)を欧州などで禁止する流れ、米国の裁判所で健康被害を訴えた原告がGM企業に勝訴した事例、日本での種子法廃止の国の政策に対して種子法を復活させる条例が次々に成立している事例などです。また水道事業の民営化に対して地域住民が自治体へ働きかけ、議会などを通して拒否することも可能である、ことなどを訴えました。


堤さんも、グローバリゼーションは投資家にはメリットが大きいが、人々の生活のことは考えようとしない。これに対して民主主義を担うのはローカルな動きであり、女性、若者たちも気持ちよく生活したいと望んでいる。この視点をもってすれば、社会運動をこれまで担ってきた人々とも橋をかけて地方行政に働きかけることも含め一緒に地域住民として頑張れるのではないか、と述べ、社会運動の新たな広がりに期待を寄せました。
植草さんは、「多国籍企業による、メディアや学界などの支配を通して人々の意識は作り上げられている。私たちが本来の情報を手繰り寄せて現状をしっかりと認識する運動を広げていくことも大切ではないか。その際には具体的に、食、医療、水問題などについて女性、若者にも運動を広げていくことが重要となる」、と指摘しました。


そして最後に植草さんは、TPPや日米FTAに象徴されるグローバリゼーションに私たちが立ち向かうためには、次の3つの段階で運動を広げていく必要がある、とまとめました。すなわち、①正しい情報を入手して現状を正確に認識すること、②最終的に目指す社会や政治のあり方を明確にすること、③その目標に到達するための道筋として、自分たちの理想を実現する独自の取り組みを実践するとともに、悪い制度を良い制度に変革、刷新するために、政治過程や諸制度・諸規制決定への積極的な働きかけを実践することが必要ではないか、と。

 

 

4)最後に主催者として、TPPプラスを許さない!全国共同行動の実行委員会から町田常高(農民連・食健連)さんが、2012年以来の私たちの活動を報告し、「これから本格化する日米FTAを止めよう!」と訴えて集会を終えました。


(まとめ TPPに反対する人々の運動 山浦康明)